借金を抱え、介護の現場で働きながら未来を探していた俺。
「資格を取る」──それが、当時の俺にできる唯一の”未来への投資”だった。
介護福祉士は国家資格。
現場経験3年以上、それさえクリアすれば受験資格はもらえた。
筆記試験と、実技試験の2段階。
ただ、実技試験は免除する道もあった。
筆記試験前にスクールで「実技講習」を受け、修了すればいい。
金は無かった。
それでも俺は、奮発してスクールに申し込んだ。
「どうにかここから這い上がってやる」そんな思いだった。
現在では、介護福祉士を受験するためには、
実務者研修を受講する必要がある。
そのための費用は、ハローワークから補助が出ることもある。
しかし、俺が受けた当時はそんな制度も無かった。
ただただ、金を払ってスクールに通うしかなかった。
スクールにはいろんな人がいた。
言い方は悪いが、正直、できない人が多かった。
簡単なことも理解できず、
何度も再試験を受ける人も珍しくなかった。
でも、それが現実だった。
スクールを修了し、筆記試験にさえ合格すれば、
誰でも国家資格「介護福祉士」が与えられる。
俺自身、試験勉強に使った時間はたったの1週間だった。
それでも合格できた。
あれから数年が経った。
いま俺は介護施設の施設長として、多くの介護職員の面接をしている。
資格を持っていても、残念ながら「この人は厳しいな」と感じる人も多い。
介護福祉士という資格は、確かに国が保証する”技術”の証明だ。
だが、資格だけでは”中身”までは保証してくれない。
──資格を取ったあと、どう生きるか。
それが本当に大事なことだった。
俺は、資格を単なる名刺代わりにせず、
現場で積み重ねた努力を武器にして、今ここに立っている。

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